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福岡地方裁判所 昭和43年(ワ)1262号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、被告より原告に対し支払うべき請負報酬の総金額については当初約定の旧建物改造等工事と変更後の本件建物新築工事の内容の差異に照し、契約当事者双方の意思が、変更前の契約における約定代金額金五〇万六、五〇〇円をもつてそのまま変更後の報酬額とするものであつたと認めるに足る特段の事情の証拠上認められない本件においては、請負人たる原告は注文者たる被告に対し、変更前の約定代金額にかかわりなく、変更後の工事請負報酬として相当額の金員の支払を請求できるものというべきである。

そこで次に、本件建物新築工事の請負報酬金額として幾何をもつて相当とすべきかについて判断する。

原告は、右工事の諸経費により算出される請負報酬相当額が前記金九一万二、三二〇円であると主張し、その内訳を記載した証拠として甲第二号証(計算書)、を提出しているが、同号証は、<証拠>によれば、原告において本訴請求の金額内容を明らかにするため、本訴提起に当り原告独自の判断により作成したものであることが認められるものであつて、その内容においても概括的で、直ちに措信できず、これをもつて相当の金額を算定する資料となすに足りないものである。

<証拠略>被告は、本件建物の引渡を受けて間もなく、その店舗で飯食店(ホルモン焼等)の営業を開始したものであるが、その後被告は、原告の紹介と連帯保証のもとに本件建物に抵当権を設定して昭和四二年七月一一日訴外福博信用金庫より本件建物建築資金及び営業上の仕入れ資金の名目で金五六万円の貸付けを受けたが、同金庫は右貸付金額を決定するに当り、債権担保のための本件建物の価額を金八〇万円と評価し、その七〇パーセントを貸付限度額として算出したものであること、被告において右借受金債務の返済ができず、結局同金庫の申立により本件建物は右抵当権の実行として任意競売に付せられるに至つたところ、右競売手続において裁判所により鑑定評価を命ぜられた鑑定人による昭和四三年八月八日当時の評価額は金七五万一、二〇〇円であつたが、競売の結果代金八〇余万円で競落されたことが認められ、右認定を動かすに足る証拠はない。(ただし、同金庫の申立による競売の結果昭和四三年九月二九日被告が本件建物の所有権を失つたことは当事者間に争いがない。)

以上認定の各事実によれば、本件建物の完成引渡当時の価額は金八〇万円を下らず、かつこれを著しく超えないものと認められるところ、出費を厭わず豪奢な建築をする場合や特殊の用途の建物の場合等を除けば建築原価は完成価額を超えないのが通常であること、本件建物の建築においては被告所有の旧建物の解体古材を一部使用したものであること、本件請負報酬の対象となる工事の内容には本件建物の建設のほかに旧建物の解体撤去工事を含むこと、その他前認定の請負契約内容及び経過等諸般の事情を綜合考慮して、本件請負報酬の金額は金八〇万円をもつて相当と認めるべきである。

二、その支払履行期限については、前示のとおりもともとは被告の息子辰一郎の中学校卒業の後原告方に徒弟として稼働することを前提としてその期間中に分割して支払う約束であつたものであるが、<証拠略>辰一郎は昭和四三年三月に中学校を卒業したが、原告方の徒弟となることをやめて静岡県所在の専門学校に進学した事実が認められるから、右支払時期方法についての約定はその前提を失い、右請負報酬残債務は弁済期限の定めのない債務となり、原告において昭和四三年四月一日以降何時でも履行を請求しうることとなつたものと認めるのが相当である。

ところが、原告は本件請負報酬残債務について、その弁済期限が合意により昭和四五年七月頃と定められた旨の不利益事実を自ら主張しているところ、原告において右報酬債権につき不動産工事の先取特権を有するものと認むべき本件建物が、福博信用金庫からの被告の借受金債務のため抵当に供せられた後、同金庫申立に係る競売により昭和四三年九月二九日被告はその所有権を失うに至つたことは当事者間に争いがなく、右事実は民法一三七条第二号所定の債務者が担保を毀滅したときに該るものと解すべきであるから、本件請負報酬残債務については、本件支払命令送達(記録上昭和四三年八月二八日であることが明らかである。)の後である右担保毀滅の日に履行期が到来したものということができる。(渡辺惺)

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